【本のレビュー】働く幸せの道(大山泰弘)~日本一大切にしたい会社

きっかけ

アマゾンのレコメンドで見つけた。

「働く」ことにネガティブな感情しか持てない現状で、「働く幸せ」が本当にあるのか、「働く幸せを見出すヒントになるか」という希望を託して購入した。

著者について

大山泰弘氏は、従業員の約7割が知的障害者という、チョーク製造メーカー日本理科学工業の元会長。

改めて調べていたら、2019年2月7日に亡くなっていたことを知った。

20代で父親の起こしたチョーク会社を継承し、ある養護学校から障害者の雇用を依頼されたことをきっかけに、障害者でも普通に働ける環境や職場づくりを進めた。

会社としての利益を出しながら、障害者の雇用を推進するという、通常の日本企業の思考ではありえない事績を達成した。

概要

本書は大山氏の生い立ちから、経営者として会社を運営し、どのようにして障害者の雇用と向き合ってきたかが語られる。

中盤では、障害者が活躍できる生産現場の工夫や、新製品開発の取り組みなどかなり具体的な会社の活動内容が紹介される。

後半では、障害者本人の自立にとっても、日本社会の意識改革にとっても、そして日本の財政にとっても、 障害者雇用は大きな意味を持つという著者の主張が述べられている。

また同時に、その主張に対する社会の不理解や不条理なども率直に語られ、筆者の忸怩たる思いが伝わってくる。

共感できるところ

知的障害者の雇用について、これほど前向きな姿勢を世間に示したという、その事実だけでも、著者およびこの会社の価値は圧倒的に高い。

事実は「前向きな姿勢」を示しただけではなく、それを実践し、会社として存続をしているのだから、頭が下がる。

また後半で言及されている、「障害者の福祉は企業に委ねるべき」という主張は、一般の認識ではなかなか理解できないことだが、これからの社会では目指していかなくてはならないことだと思った。

障害者は福祉施設に入ると収入を得る方法はないが、企業に雇用されるとその収入により自立することも可能になる。

国はその企業に最低賃金分の補助をすることで、福祉施設での養育費などよりもはるかに低いコストで障害者の援助をすることができる。

そして障害者を受け入れた企業では、障害者の働きやすい環境や雰囲気、思いやりを醸成するという社員の人間としての成長が促される。

著者は(障害者雇用は)「企業だからできた」と言っている。

公的福祉では上から目線の対応、つまり保護してやっているという対応しかできず、ほどほどの仕事しかさせないのでコストにしかならない。

企業でやると、利益を出さないと継続できないので、障害者が活躍できる環境の創出に真剣になれる。

こんな人におすすめ

・企業経営者

・製造ラインのある現場で働いている人

・福祉関係の仕事に従事する人、志す人

読後感 ★★★☆☆

著者の取り組みや実績については、本当に素晴らしいという思いしかわかない。

その一方で、障害者雇用を推進することへの抵抗勢力である企業や行政の態度については本当に落胆させられるものがあった。

「君は労働省を敵に回すつもりか」というタイトルの章では、既得権益のむごさや、利益追求の狭い視点に、愕然とさせられた。

このような問題を啓発するための書籍として、もっと読まれればいいと思った。

個人的には、「働く幸せ」についてのヒントが何か得られるかと思ったが、そのような意味の学びや発見が得られなかった。

人としての幸せは、「人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること」とあって、確かにそうかもしれないけれど、今の僕としては、「人にほめられること」を求めすぎて自分を失っているのが現状だから、そのあたりにあまり幸せを感じることができない。


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